骨が足りないと言われたら、インプラント治療はできない?
インプラント治療は、しっかり噛める機能性と自然な見た目の両立が期待できる治療法として、多くの方に選ばれています。ただし、誰にでも同じ条件で行えるわけではありません。インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む治療であるため、骨の量や厚み、質の状態が治療の可否だけでなく、治療後の安定性や長期的な予後に大きく関わります。歯を失ったままの状態が長く続いた場合や、歯周病などの影響を受けている場合、顎の骨は徐々に吸収されていきます。
そのため、診査の結果「骨が不足している」と判断されるケースは決して珍しくありません。実際には、インプラントを長期的に安定させるためには、骨の高さや幅が十分でない場合に骨造成を併用することが必要となるケースが多くあります。単に「埋め込めるかどうか」ではなく、「将来的に安定して機能させられるかどうか」という視点が重要になるためです。
骨の量が不足している状態で無理に埋入を行うと、インプラント体を十分に支えられず、トラブルにつながる可能性もあります。そのため、必要に応じて骨造成を行い、土台となる骨の環境を整えてから治療を進めることが、長期予後を見据えた治療計画につながります。今回は、骨の高さや幅が不足している場合に行われる代表的な骨造成治療法についてご紹介します。
インプラント治療と骨の関係
インプラント治療では、歯を失った部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着します。その構造上、インプラントを長期的に安定させるためには、十分な骨の高さ・幅・質が必要になります。単に「埋め込めるかどうか」ではなく、「将来にわたり安定して機能するかどうか」が重要なポイントです。しかし、歯を抜くと、その周囲の骨は自然に吸収され、時間とともに痩せていくことが知られています。特に抜歯後の数か月間は骨吸収が進みやすく、その結果、後からインプラントを検討した際に骨が不足していると判断されるケースも少なくありません。
失われる前に骨を守るリッジプリザベーション(歯槽堤保存術)
当院では、将来的なインプラント治療の可能性を見据え、抜歯が必要になった段階でリッジプリザベーション(歯槽堤保存術)を行っています。抜歯と同時に骨補填材などを用いて処置を行い、抜歯後に起こる骨吸収をできる限り抑える方法であり、「骨を増やす前に、まず守る」という予防的なアプローチです。骨の吸収を最小限に抑えることで、その後の治療選択肢が広がり、インプラント治療をより安定した条件で進めやすくなります。長期的な視点に立った骨の管理が、将来の治療結果に大きく関わるためです。
すでに不足している骨には「増やす治療」を
一方で、すでに骨の高さや幅が不足している場合には、埋入時またはその前段階で骨造成(骨を補う治療)を行うことがあります。骨造成は、インプラントを支えるために不足している部分へ骨補填材などを用いて骨の形態を整える治療です。これにより、人工歯根を安定させるための土台を確保します。私たちは抜歯時に「骨を守る(予防)」、そして不足している場合には「骨を増やす(治療)」という二段階の考え方を大切にしています。骨の状態は患者様ごとに異なります。そのため、精密な診査・診断を行ったうえで、本当に必要な処置を見極め、長期的な安定を目指した治療計画をご提案しています。
骨造成治療の代表的な方法
骨造成には複数の方法があり、骨の不足している部位や程度によって適した治療法が異なります。
上顎洞を利用して骨の高さを補う「ソケットリフト」
ソケットリフトは、主に上顎の奥歯において、インプラントを埋入するための骨の高さが不足している場合に検討される治療法です。上顎の奥には上顎洞と呼ばれる空間が存在しており、この部分の骨が薄くなると、インプラントの埋入が難しくなることがあります。そのため、インプラントを埋め込む穴から上顎洞の底部を慎重に持ち上げ、骨補填材を充填することで、必要な高さを確保します。
骨の不足が限定的な場合には、インプラント治療と同時に行われることもあり、治療期間や身体的負担を抑えやすい点が特徴です。骨の吸収が進行していると適応できない場合もあるため、事前の診査が重要となります。
上顎の骨の高さが足りない場合に行われる「サイナスリフト」
サイナスリフトは、上顎の骨の高さが大きく不足している場合に選択される骨造成法です。歯の欠損期間が長い場合や、骨吸収が進行している場合には、ソケットリフトでは十分な骨量を確保できないことがあります。
この治療では、歯肉の側面から上顎洞にアプローチし、上顎洞の粘膜を丁寧に挙上したうえで、その下に骨補填材を填入します。骨が安定するまで一定の治癒期間を設け、その後にインプラント治療を進めるケースもあります。治療期間が比較的長くなる可能性はありますが、骨の状態を整えることで、インプラント治療の基盤を形成することを目的としています。
骨の幅や部分的な欠損を補う「GBR法(骨誘導再生法)」
GBR法は、高さよりも骨の幅が不足している場合や、部分的に骨が欠損している部位に対して用いられます。インプラントを支えるためには、十分な厚みを持った骨が必要となるため、骨が薄い状態では安定性に影響を及ぼすことがあります。そのため、骨を増やしたい部位に骨補填材を配置し、その上を専用の膜で覆います。この膜によって、骨以外の組織が侵入するのを防ぎながら、骨の再生を促します。骨造成とインプラント埋入を同時に行う場合もあれば、骨が形成されてから次の治療段階へ進むこともあります。欠損部位に応じた調整が可能な点が特徴です。
骨造成で使用される骨補填材「Bio-Oss」
Bio-Oss(バイオス)は骨造成に用いられる骨補填材の一つで、人の骨に近い構造を持っています。新しい骨が形成される際の土台として機能し、骨組織の再生が進みやすい環境を整えるために使用されます。補填材そのものが骨へ完全に置き換わるというよりも、周囲の骨が増生していく過程を支える役割を担います。
ソケットリフトやサイナスリフト、GBR法など、複数の骨造成治療において用いられることがあり、適応は骨の状態や治療計画によって判断されます。使用する材料については、検査結果を踏まえたうえで説明が行われます。
まとめ
骨が足りない場合でも、状態に応じた処置を行うことで、インプラント治療が検討できることがあります。大切なのは、不足した骨に対応するだけでなく、将来的に失われる骨をいかに守るかという考え方です。当院では、抜歯時に「骨を守る」ことを重視し、必要に応じて骨造成により「骨を増やす」治療を組み合わせ、長期的な安定を見据えた計画を立てています。骨が足りないと言われた場合も、まずは専門的な検査と説明を受け、治療の可能性についてご相談されることをおすすめします。













2026年2月26日 (木)
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